レーシック、ICL、SMILEといった屈折矯正手術に関する各国の普及状況

本記事は米国の眼科専門誌 EyeWorld(Summer 2025) に掲載された記事の翻訳です。各国のレーシック、ICL、SMILEを中心とした屈折矯正手術の最新動向を眼科専門医たちの視点で紹介します。

2025/08/19 更新

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日本ではこの10年間でレーシックの症例数が減少傾向にあり、感染症事例の報告、美容外科系クリニックによる価格競争、ネガティブキャンペーンの影響といった背景があります。多くの日本の眼科医は、レーシックに対して“美容外科医による商業利用”という悪いイメージを持っており、その一方で、ICLの人気は急速に高まっています。

出典: https://www.eyeworld.org

IQ Laser Vision 創設者のマリュギン医師は、中国やロシアにおける屈折矯正手術の普及状況について次のように言います。

 

中国ではICL手術が巨大市場となっており、世界で最も多くの症例が行われています。これは人口の多さだけでなく、若年から近視を患う人の数が多いという背景があり、近視はアジア太平洋地域全体で拡大している問題です。

 

ICLの普及を加速させている背景には、EVO ICL®などの新しい技術によって、より安全で容易な手術を行えるようになり、術者が自信をもって施術できるようになったことが挙げられます。

 

一方、ロシアではICLの普及は限定的で、地元メーカーによる代替品が複数存在します。中国でもICLの成功を受け、類似の有水晶体眼内レンズが開発されていますが、まだICLほどの実績には至っていない状況です。

 

また、ロシアではSMILE®はあまり普及していません。

 

ロシアではフェムトセカンドレーザーを用いたレーシックが依然として主流です。その理由の一つとしては、レーシックとSMILE®の視力結果の差に、劇的な違いがあるわけではないためです。ただし、SMILE®は創部が小さくドライアイの発症リスクや角膜生体力学への影響が少ないと考えられており、SMILE®を好んでいる医師もいます。

 

企業やクリニックが積極的に広告を行っていることもあり、中国のSMILE®の普及率は80%以上に達している一方、ロシアでの普及率は約20%ほどにとどまっています。

 

マリュギン医師は、各国医師の教育や世代の違いが影響しているという話を聞きます。

長年レーシックを行ってきた医師たちは新しい技術への移行をためらう傾向がありますが、若い医師たちはSMILE®やCLEARといった新しい技術を積極的に取り入れています。一人でも多くの医師が、快適で自然な手術を行うため、教育は不可欠です。

出典: https://www.eyeworld.org

カリフォルニア大学ロサンゼルス校 医学部 眼科学講座 Stein Eye Institute 教授のリン教授(アメリカ・カリフォルニア)はSMILE®やICLをはじめとする屈折矯正手術に精通しています。

 

SMILE®は切創が小さいため、術後6ヶ月間のドライアイ症状を発症するリスクがレーシックよりも少ないです。そのため私は、自分の患者の多くに、SMILE®を提供するようになりました。

 

SMILE®は、ほかにも高度近視におけるハロー症状がレーシックよりも少なく、屈折安定性が高いといった長所があり、これまでに2万5000眼を超えるSMILE®を行ってきましたが、再手術をしたのは1%にも達しません

 

リン教授はSMILE®の欠点についても語ります。

 

一方でSMILE®には、角膜のより深い部分を切除するため、レーシックよりもわずかに多くの角膜組織を削除することになる、といった欠点があります。

 

フラップを作らないことから、レーシックよりも残存角膜の強度が高いといったエビデンスもありますが、必要最低限以上の角膜組織をできるだけ傷つけないということは、とても重要なことなのです。

 

だからこそ、ICLが登場したのです。

 

EVO ICL®は、一切の角膜組織を削らず、取り外しもできることから、素晴らしい技術だと思います。

 

リン教授は、SMILE®が承認された直後から興味を持ち、SMILE®の術式を学ぶために中国に渡った経験があります。

 

そんなリン教授は、台湾や日本といったアジア諸国のSMILE®事情について、次のように語ります。

 

アジアには多くのSMILE®市場があります。2020年、台湾では市場シェアの95%はレーシックが占め、SMILE®は5%でした。現在では、台湾の屈折矯正手術市場の70%は、SMILE®が占めていて、レーシックは30%ほどです。また台湾では、ICLがまだ導入されていません。

 

リン教授によると、台湾市場におけるレーシックからSMILE®への移行は、マーケティングや臨床成績のほか、患者たちの口コミといった複数の要因が組み合わさった結果なのです。

 

またリン教授は、レーシックについて次のような見解を述べます。

レーシックは長年にわたって行われてきた素晴らしい手術です。患者からの要望もあります。ただし、SMILE®を行うには専用レーザーへの投資が必要です。もし患者がSMILE®を望んでいなければ、すでにレーシックの熟練外科医である医師がSMILE®に切り替える理由はありません。医師は患者にとって最善を尽くしますから、レーシックの方が得意であればレーシックを選びます。

出典: https://www.eyeworld.org

SMILE®手術を導入してまもない時期は、SMILE®を行う患者をしっかり選ぶことが重要です。望ましいのは、レーシックでは十分な結果が得られない患者を選ぶことです。

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ICLは2005年にアメリカで初めて承認されたが、当時は、あまり良いものとは言えませんでした。多くの症例数がある中で、白内障の発生割合が1%もあり、これは高い数字であったためです。その後、2022年にアメリカで承認された改良版のEVO ICL®は、一切の角膜組織の除去がなくなったことで、レーシックやSMILE®の適応外となった患者にとって、有力な選択肢の一つとなりました。ただしICLは、レーシックやSMILE®よりも費用が高額なのです。

出典: https://www.eyeworld.org